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[knoppix:1096] Re: 障害者、高齢者、失業者にKNOPPIXを!

Date: Mon, 03 Mar 2003 02:39:14 +0900
User-agent: Microsoft-Entourage/9.0.2615
中西さん、こんばんは。長文ですが、i−dayプロジェクトのこれまでの歩みを御
説明いたします。

私が今関わっている「i−dayプロジェクト」というボランティア活動は2000年7
月に始まりました。

私の職業は地方公務員なのですが、4、5年前あたりからまだ使える中古パソコンが
捨てられていて、勿体ないなぁ・・・と感じていました。

ちょうどその頃、地元保健所主催のボランティア講座に参加して、精神障害者と交流
したり、共同作業所を見学しに行ったのですが、そこに通う障害者が1個1円にも満
たないベアリング(軸受け)をつくって自らの生活費に充てている、という話を聞か
されました。ベアリングはいくら頑張っても1時間に60個をつくるのがやっとで、
1日6時間作業しても、300円程度の収入しか得られないのです。単価を高くして欲
しいと要請しても「嫌なら健常者にやらせる」と低単価のままで作業を引き受けてい
るとのこと。

もし、彼らがパソコンの技術を習得して、付加価値の高い商品を作り出すことができ
れば、彼らの自立にも役立つのではないか・・・そう思った私は使われなくなったパ
ソコンを彼らに使ってもらうため、友人知人に呼びかけました。しかし、なかなか思
うようには集まりませんでした。

そんな中、札幌市役所で使われていたパソコン250セット(本体、ディスプレイ、
レーザプリンタ等)が処分されると聞き、これは放置できないと思い、そのパソコン
の所有者であるリース会社にお願いして、そのうちの100台を引き取ることができ
ました。Pentium100MHz、RAM 16MB、HDD 約800MBの性能的には貧弱なマシンでしたが、
初心者の訓練用には十分なものです。ボランティア10人ほどが各自のマイカー、ト
ラックで廃棄前のパソコンが置かれている倉庫に駆けつけ、めいっぱいパソコンやプ
リンタを積んで、札幌から40キロ離れた岩見沢の倉庫(閉鎖したホテルの客室)へ
と運び込みました。

ところが、問題はOSの確保です。パソコンメーカーやマイクロソフトに何度とお願い
してはみたものの、その機種のWindows95は製造終了となっていて、在庫もないので
提供できないと言われてしまいました。また、誰かが持っていたとしても、それをコ
ピーして使うのは違法だと言われ、せっかく手に入れたパソコンを半年ほどそのホテ
ルの部屋に置きっぱなしにせざるを得ませんでした。

しかし、何度と交渉したところ、「実は100本ほどあります」という答えがパソコ
ンメーカーから返ってきて、無償で提供していだたきました。OSが手に入れば、後は
汚れを拭いて、OS等のソフトをインストールすれば、すぐに渡すことができます。
2001年の春から夏にかけて数回にわたり作業をして、100台すべてを障害者や高齢
者に渡すことができました。

けれど、現実はまだまだパソコンを必要とされている障害者や高齢者は多く、この1
00台で活動を終わらせることはできない、と感じました。

活動を展開していくうちに、学校や行政機関で使われていたパソコンが、更新のたび
に年間1,000台以上が廃棄されている事を知りました(北海道内だけで)。改正
リサイクル法の施行で、リース会社はリースアップパソコンを回収する義務ができ、
回収されたパソコンはリサイクルに回されることになっていますが、現状はまだ使え
るパソコンを粉砕して、サーマルリサイクル(燃やしてその熱を利用する)やマテリ
アルリサイクル(溶かして貴金属を取り出す)されるケースが多く、リユース(再利
用)されるケースは少ないです。これは、リユースを嫌がるパソコンメーカーの意向
が強く働いていると聞きます。

昨年も企業や行政機関、学校等で使われていた約100台のパソコンを引き取る事が
でき、清掃・整備の後、希望者に渡すことができましたが、常に困るのがOSの入手方
法です。メーカーからの提供が常にある訳ではなく、また、マイクロソフトが行って
いるOS寄贈プログラムもマイクロソフトが認めた団体のみの提供ということで、個人
使用に関しては一切提供しないそうです(理由は不明です)。

けれど、パソコンの技術を早くマスターするには、個人で使えるパソコンを用意する
必要があります。

一時は寄付金を募って、その集まった寄付金でWindowsを正規に購入し、パソコンと
共に提供しようかとも考えましたが、OSだけで莫大な金額になり、とてもボランティ
ア活動では対処できないことが分かりました。

そこで、今後は原則としてLinuxやBSDといったオープンソースのOSを用いることとし、
必要に応じて講習会を行い、全くの初心者でも使えるようにすることにしました。

ところが、いざLinuxやBSDをパソコンにインストールしようとすると、エラーが出た
り、xの設定がうまくいかない等なかなかすんなり進みません。カーネルを再構築す
れば何とかなるのでしょうが、まだまだ勉強不足の私たちにとっては、そう簡単には
いきませんでした。

もっと手軽に使えるLinuxはないのだろうか・・・と悩んでいたところ、KNOPPIXのこ
とを教えてもらい、早速CD-ROMを入手して使ってみたところ、予想していたより簡単
にKDEが立ち上がり、OpenOffice.orgもバッチリ動き、思わず「これだ!」と思いま
した。

将来的には、ボランティア団体のままではなく、法人化して、官民、そして各地域
のNPO、ボランティア団体と協力しながら活動を展開していく予定です。台数が台数
だけに、ボランティア団体の活動としては限界にきています。

【なぜか拡がらない日本でのパソコン提供活動】

i−dayプロジェクトのような活動を継続して行っているところは、日本では意外
と少ないようで、私が知る限りでは埼玉、静岡、神戸の団体とIBMやマイクロソフト
等の後ろ盾で設立されたNPO法人くらいのようです。

米国ではかなり以前からこの手の活動が盛んなようで、各州で何十ものNPOがリユー
ス・寄贈活動をしているようです。国民性の違い、税制の違いといえばそれまでです
が、日本でも全国各地で展開されても可笑しくはないと感じています。

確かに肉体労働あり、精神的プレッシャーありで、地味な活動をし続けている訳です
が、デジタルデバイド(情報格差)の問題を放置するわけにはいかず、かと言って今
は行政におんぶだっこする時代ではないです。

もしかしたら、KNOPPIXのCD1枚で、これまで頭を悩ませてきたパソコン再利用も
問題からデジタルデバイド解消の問題まで、解決してくれるかも知れません。

活動を展開する上で難問は山積ですが、廃棄パソコン、デジタルデバイドの問題を解
決しない限り、この国は本当の意味で幸せになれないと感じている次第です。大阪で
も、ぜひ同様な講座を開催してください!!


いろいろと教えていただくことが少なくないと思いますが、どうかこれからも御支援
のほどよろしくお願い申し上げます。

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        神 生 総 一  (Nobukazu Kamio)
          e-mail  nob@xxxxxxxx     
                            n-kamio@xxxxxxxxx
          web     http://www.kamio.jp/

  家電製品エンジニア(AV情報家電) 登録番号第E011100201号
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